CL選手登録とスカッド、そして補強の話を少々
はじめにー慣れ親しんだ選手たちとの別れ
We have reached agreement with Atletico Madrid for the transfer of @trippier2.
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) 2019年7月17日
We wish Kieran all the best for the future.
トリッピアーのアトレティコ・マドリ―ド移籍が決まり、ローズもプレシーズンツアーに帯同せず移籍先を探している。またここ数年で最高の逸材と言えるエドワーズはブレントフォードの練習に参加しており、下のカテゴリーでは圧倒的な能力を発揮していたオノマーも移籍先を模索しているそうだ。
彼らには共通点が一つある。所謂ホームグロウン(HG)に該当する選手であるということだ。
HG選手の移籍金は高騰の一途を辿り確保が困難だ。そんな中一気に二人もHGのレギュラーを放出して大丈夫なのか?スパーズのHG事情はどうなっているのか?
質問箱でHG制度を説明して欲しいというリクエストがあったので、今回の記事では制度説明をしつつ、新シーズンのスカッド構成について考察し、以上のような疑問に答えたいと思う。
レギュレーション
補強予想の記事でも書いたのだが、HGと一言に言っても実はプレミアリーグ(PL)とチャンピオンズリーグ(CL)でレギュレーションが異なる点に注意が必要だ。
ざっくり言うとPLのレギュレーションの方が若干緩い。デイビスはPLだとHG扱いになるがCLだと非HGなのだ。とりあえず条件の厳しいCLをメインに考えればPLの方は気にしなくても大丈夫。PLのレギュレーションはリンクだけ貼っておく。
・2つのリスト
まず登録選手枠はAリストとBリストに分けられる。Aリストには25人まで選手が登録可能で、「自国育成選手(locally trained players)≒HG」と「それ以外の選手≒非HG」の2種類の選手から構成される。(UEFAのルール上HGという言葉は無いが、便宜上HG,非HGとする。)なお最低でも2人はGKを登録する必要がある。
・Aリスト
Aリストの25人のうち最低でも8人はHGでなければならない。よって非HGは17人までしか登録できない。なおHGの数が足りない場合も非HG枠が増えることはない。(例:HGが7人しか登録できなかった場合は最大24人登録)
そしてHGはさらに2種類の選手に分けられる
(1)クラブ育成選手: 国籍や現在の年齢に関係なく、15歳から21歳までの間に、当該クラブに3シーズン以上登録されていた選手。最大8人まで登録可能。
例:ケイン、ウィンクス、KWP、(ローズ)*訂正
(2)協会育成選手: 国籍や現在の年齢に関係なく、15歳から21歳までの間に、同一サッカー協会の別のクラブに3シーズン以上在登録されていた選手。最大4人まで登録可能
例:デレアリ(トリッピアー)
なおダイアーはスポルティング(ポルトガルサッカー協会)、デイビスはスウォンジー(ウェールズサッカー協会)で当該期間(のほとんど)を過ごしているため、(1)(2)どちらにも該当せず、非HG扱いとなる。スウォンジーはプレミアリーグに参加しているウェールズ協会のクラブなので少しややこしいのだ。
ちなみに国外クラブにローンされていた場合はローン先クラブで年数がカウントされる。
HG枠は (1)クラブ育成選手 8人を登録することで埋めることがルール上可能な一方、(2)協会育成選手 では4人までしか埋まらない。つまり、クラブで育成した選手を4人以上登録出来なければAリスト25人を満たすことはで出来ないということになる。育成って大事ですね。
・Bリスト
Bリストはざっくり言うと21歳以下のプレーヤー。より細かく言うと1998年1月1日以降生まれ。
もう一つ登録に際しての条件があり、それは「15歳の誕生日から登録までの間、中断することなく2年間該当クラブで登録されている」ことである。
興味深いのはフォイスのケースだ。フォイスは1998年1月12日生まれであり、誕生日要件はクリア。また彼は2017年8月30日にスパーズに加入している、そしてリストの提出はAB関係なく2019年9月以降だ。つまりフォイスはBリスト登録の要件をギリギリで全て満たすことになる。去年登録出来なかったのはトレーニング要件のせいだったのか。
一方、2018年7月1日にスパーズに加入した(ソースはTransfermarkt)期待の新星トロイ・パロットはまだ1年しかスパーズでトレーニングしていないのでBリストに入ることが出来ずまだCLでプレー出来ない。(修正:非HG枠で登録可能) なおPLでは21歳以下でさえあればOKなので、もしかしたらPLで今季プレーが見られるかもしれない。
スカッド構成の話
さて、前提条件となる説明を済ませたので来季のスカッド構成について考えたい。以下に表でまとめた。
多少議論になる部分もあるかもしれないが、大体このようになるだろう。
移籍の可能性が高い選手については、微妙なところがあるが下記の通り分類した。プレシーズンに帯同しているかどうかが一つの基準。ワニャマも帯同していないが代表があった点を考慮して不確定組にしている。
移籍確定組(取り消し線):トリッピア、ローズ、CCV、オノマー、エドワーズ、ヤンセン、エンクドゥ
不確定組(赤下線):トビー、ワニャマ、エリクセン
なお確定組はスカッド登録枠にカウントしていないが、不確定組はカウントしている。
枠ごとに見ると、HGが4人、非HGが15人、若手が5人で24人構成のスカッドとなっている。
非HG枠はあと2枠空いているが、そのうち一枠はロチェルソで埋めたいのだと思われる。もう一つの枠をどう使うのかが興味深い。もう一人獲得候補がいるのか、ジョレンテで埋めるのか。
HGに該当するのは4人と少な目である。その割にHG選手獲得の噂が少ないのはやや奇妙な話ではある。(19歳のセセニョンは獲得したとしてもパロットと同じ理由でBリストには入らないが、Aリストの協会育成HG登録となる)
もちろん水面下でスカウトが何人もリストアップしているはずだが、エリクセンマネーが入らない限りは高額なロチェルソを獲りつつ、これまた高額なスタメン級のHG選手までるというのはなかなか厳しい話だと思う。
ということでひとまずはプレシーズンに帯同している若手選手を見極めた後で、新たなHG選手を加えるかどうか決める、というのがポチェの考えだと推測する。個人的にロールズ、タンガンガ、パロット辺りは1stチームに加わるだけのポテンシャルは十分にあると思うし。プレシーズンマッチでは、ぜひ先に挙げた3選手を中心に若手のプレーに注目していただきたい。
見方を変えてポジションごとに見ると、一人しかいないLBは補強が急務。セセニョンをLBで使うつもりなのだろうか。まあ若いから将来的にポジションを変えることも十分ありうるだろう。WGとFWも控えがおらず、非HG枠を使うならここか。AM/CMにはロチェルソを加えるつもりだろう。CBは若手が何人かいるしダイアーやデイビスで凌ぐことも出来るので、他と比べると優先順位は低い。やはりサリバは嫌がらせの意味が強かったと思う。
なおイングランドU18,19,20で代表入りしていたスミス(23)というGKがdevelopment squadでトライアル中だそうだ。
#thfc Bit more on development squad trialist Ted Smith who played 60 minutes in today's 2-2 with Ebbsfleet.
— Lilywhite Rose (@Lilywhite_Rose) 2019年7月13日
- Aged 23
- Represented England at 18,19 & 20 levels
- Played 30 times for Southend United, released this summer
- Followed on Insta by Dele and Winks. pic.twitter.com/MuT6nGbVun
公式に契約していないので表からは省いているが、トップチームに入ってこれるなら面白い。ホワイトマン、オースティン、デビー等もいる中でさらにHG枠の若手GKを獲得しようというのは、第3GKを是が非でもHGにしたいという意図の現れではなかろうか。
今季の基本方針ー新プロジェクトの始まりは悲喜こもごも
ポチェは以前、新シーズン/新プロジェクトを始めるにあたりcruel(冷酷)になる必要があると語っていた。トリッピアーやローズについては本人の意向もあるが、新しいプロジェクトを進めるための「痛みを伴った改革」といったところなのだろう。
実際ポチェはスパーズ就任後にレノン、アデバヨール、カブールといった功労者でさえもバッサバッサと切りまくり、何も無くなった荒野からケイン、アリ、ダイアーといった新しい芽が次々と生えてきたのだ。ポチェ政権第二期の始まりである新シーズンは、ピンポイントで大型補強(エンドンベレ、ロチェルソ)を敢行しつつ、手が回らないポジションは若手の突き上げによって新陳代謝を促すというのが基本方針なのだと思う。
まとめ
- 非HG枠を誰に使うのか?ロチェルソ、ジョレンテ再契約、さらには別のターゲットも?
- セセニョンはLB起用か?
- サリバはただの嫌がらせの可能性大。
- HGが4人と少なくなるが、まずは若手の突き上げに期待。
- HG(見込み)若手による第3GK争いにも注目。