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トッテナム ホットスパー (スパーズ)について語るブログ

「スパーズの舞台裏で起こっていること」についての考察

トリッピアーが残したヒント

やや底を抜けた感はあるものの、今季は結果も内容も伴わないスパーズ。結果やパフォーマンスもそうだがポチェのコメントや起用法で腑に落ちない点が多くなり、TLからもファンのフラストレーションをひしひしと感じる。

4-3-1-2フォーメーションへの不満、移籍できなかった選手がいるせいでスカッドの士気が下がった、ポチェの厳格な指導や5年前から変わらないトレーニング内容に選手が辟易している等様々な噂がメディアで挙げられている。

このような不調の理由は散々メディアで書かれているので今更取り上げない。不調の時は必ず「~が悪い」「~を変えないといけない」という言説があちこちで飛び交うものなので、一つ一つの言説に気を取られ過ぎるのも良くないように思う。ピッチ外のことを書くと謳っているブログなので、今回はより構造的な部分に着目したい。

その際のヒントとなったのが、今夏スペインへと旅立ったトリッピアーの発言である。彼はスパーズでのプレーを続ける意向もあったと言われているが、結局「スパーズの舞台裏では何かが起こっており、移籍したいと思った。」という趣旨の発言を残している。いったいこの「舞台裏で起こっていること」とは何なのか。今季のスパーズの不調との繋がりはあるのか。もっと突っ込んで「舞台裏で起こっていること」はスパーズの戦略に支障を来すものなのかどうか。今回はこれらの点について考える。

'19移籍市場の方針

放出:トリッピアー、フォルム(その後再契約)、ジョレンテヤンセン、エンクドゥ、オノマー、エドワーズ、(ローン移籍:CCV、ジョルジウ、ロールズ、エイモス)

獲得:エンドンベレ、クラーク(リーズへローンバック)、ロチェルソ、セセニョン

 

上記の通り若手をカウントするとローンを除いて7人の選手を放出。一方で放出濃厚と思われていたエリクセン、トビーは残留。ローズ、ワニャマ、さらにオーリエにも移籍の噂が挙がったがこれらの選手は結局残留している。

 

おそらく今夏移籍市場のテーマはポチェの言う通り「Regeneration」であった。しかしその発案者はおそらくレヴィだろう。結局は雇われの身である監督という立場からすれば優秀なスカッドであれば年齢は基本的に関係はないはずで、ピークを過ぎかけている比較的高給のベテランを放出し給与の低い若手主体に切り替えるというのはまさに経営的な判断である。

ということは今夏の移籍市場の方針は「レヴィ主導での放出」「ポチェの意向を最大限に反映した補強」だったのではないか。実際トリッピアーは「ポチェは自分を放出したいとは言わなかったのでレヴィと話をしようとした」とも語っている。

Kieran Trippier hits out at Daniel Levy and Mauricio Pochettino over Tottenham exit | Football News | Sky Sports

さらにトリッピアーは「クラブのために全てを捧げてきたのに自分が放出されるという噂を聞いた」と語り、ローズも「今夏売りに出されたようだが結局残留出来た」といったコメントを残している。

Tottenham star Danny Rose opens up on transfer speculation and his future | Football | Sport | Express.co.uk

(追記:やはりレヴィはローズは売却するつもりだったようだ。https://www.standard.co.uk/sport/football/danny-rose-tottenham-want-me-gone-but-i-will-leave-contract-expires-2021-a4285931.html?utm_medium=Social&utm_source=Twitter#Echobox=1573646513)

彼らの言葉を信じるならば、自ら移籍を望んだというよりクラブ=レヴィ主導での放出を進めていたということのようである。特にトリッピアーは「ポチェに問いただしたが明確な答えを得られなかったのでレヴィに電話した」ということで、ポチェが放出の権限を持っていないことを示唆している。

トリッピアーのいう「舞台裏で起こっていること」とは「功労者であろうと年齢を理由に切る」というクラブの方針であり、ベテラン選手の中には少なからず反発があったことが想像できる。

 

一方で補強に関しては、エンドンベレ及びクラークの獲得後しばらく何の進展もないことに業を煮やしたポチェが「移籍について何も知らされていない」とフラストレーションを露わにしていたが、最終日にロチェルソとセセニョンを獲得した後は「私はとてもハッピーだ」と掌を返していた。

Tottenham news: Mauricio Pochettino says he 'knows nothing' about transfers and Spurs should change his job title – ‘I’m not in charge, I’m just a coach’

https://www.independent.co.uk/sport/football/premier-league/tottenham-hotspur-transfer-news-mauricio-pochettino-paulo-dybala-giovani-lo-celso-ryan-sessegnon-a9050141.html

エンドンベレ、ロチェルソ、セセニョンの3人は移籍市場開幕前からポチェのトップターゲットであると報道されており、途中進展がないことに対する焦りこそあったものの「ポチェの意向を最大限に反映した補強」は最終的に実現した。

 

スカッドへの影響

では「レヴィ主導での放出」「ポチェの意向を最大限に反映した補強」がチームの不調を招いた可能性はあるのだろうか。

 

確かに今までポチェを信じて頑張りさえすれば良かったのが「功労者であろうといつレヴィに大ナタを振るわれるか分からない。」のであればベテラン選手の士気に影響した可能性もなくはない。

一方ポチェはポチェで積極的な若手起用に陰りが見えており、「実績関係なくチームのために走る奴が試合に出られる」だったのが「ポチェに信頼されている選手は何があっても試合に出られる」に変化していったように捉えられなくもない。

この状況では「ポチェの信頼を得られなければ話にならないが、序列を覆すのは相当困難。それに頑張って序列を覆してスタメンを奪ったところで結局年を取ればあっさり放出...?」と、スパーズでの将来に疑問を持った選手が移籍を望む....ということもあるのかもしれない。

あくまで上記は妄想であり本当の不調の要因は分からない。結局のところ他にも冒頭に書いた様々な要因があり、補強/放出方針も含めて何か一つの理由で今季の不調を説明するのは難しいと感じる。

 

確かに移籍を望んだ選手、移籍させたかった選手がクラブに残ったという現在の状況は究極的にはレヴィの責任ではある。しかしローズが語るように「実際にオファーは来なかった」のであればそれ以上レヴィにはどうすることもできないだろう。ポチェはローズを信頼しており、安価で無理矢理放出を敢行するわけにもいかないだろうし。ワニャマのようにプレー機会が減っているにもかかわらず、クラブが合意したオファーに本人が納得しないケースもあり、補強も放出も誰か1人がコントロールできるものでもないのが現実である。

 本当の問題は?

今季の不調よりもより長期的な、大きな問題がある。ポチェと経営陣やアナリスト等、クラブ内の連携が上手く取れていなさそうなことだ。(ユースとの連携に関しても批判的な見方が多い。英語だが詳しくはこちらを読んで頂きたい。https://windycoys.com/2019/10/guest-blog-youth-special/ ) 今夏新たに5年契約を締結し、クラブから重要な選手であると認識されているルーカスはここまで12試合500分弱の出場、しかもNLD、リバプールバイエルン戦などビッグゲームでは悉く先発から外れるなどポチェからの信頼を勝ち取れていない。

ポチェはそもそもルーカスの獲得自体に消極的であったが、最終的にはスカウトの意見が採用されて獲得が決まった形だ。今夏獲得したクラークもスカウト主導での獲得であり、クラブ内のアナリストはスピードがあり幅を取れるWGが必要だと分析しているのだろう。(スパーズではCFでプレーすることが多いがルーカスはPSGではWGでプレーしていた。)実際不調の時のスパーズは大外のスペースを活用出来ず中央渋滞を引き起こすことが多い上にスピードあるSBが不足しているため、これらの補強の意図はよく分かる。にもかかわらず中央に選手が固まる傾向のある4-3-1-2のフォーメーション/戦術に拘り続けてシソコから懐疑的な声ほど状況を悪化させてしまったのである。ここはポチェの責任であり、もっと早く軌道修正出来たのではないかと思う。

さらに言うと、クラブ上層部の今季の方針が「Regeneration」であるならば、ポチェはその方針を尊重し、若手を積極登用しながらスカッドの整理を進めなければならないはずだ。トロフィー獲得というのはあくまでポチェ個人(と一部選手)の望みであり、クラブの目標よりも優先されるものではないのだ。ポチェが責められるのであれば、前述の戦術面とクラブ方針との整合性だろう。

 

ポチェとスパーズの未来

この5年の間でポチェに移籍関連の最終決定権が与えられるなど全権監督による長期政権という方向でレヴィは計画を練ってきたわけたが、今後チームが調子を取り戻そうとこの方針は完全に放棄されるだろう。

理由は、CL決勝前に「もしCLを獲ってしまったらもうモチベーションを保てない。」「レアル?いつかね。」等、長期政権を築くに相応しくない言葉をポチェがいくつか残しているからだ。これから長期政権を築く意欲が無いのであれば、いずれ来るポスト・ポチェ時代に備えて移籍関連の権限をポチェから取り上げるのは自然の流れだろう。スパーズにはスパーズというクラブとして目指したい方向性があるはず。ポチェがスパーズで続けたいのであれば、ヘッドコーチへの実質的な降格(?)を受け入れる、もしくは自分は全権監督に相応しいということを再びレヴィに証明する必要がある。

この二つの選択肢がポチェにとって魅力的であるかは定かではない。ステップアップしてトロフィーを獲りたいといっても別に責められることでもないとは思う。ただクラブの方針に納得がいかないのであればポチェが出ていく以外の選択肢はない。結局のところポチェは雇われの身であって雇い主はレヴィなのだ。

ポチェがどう考えるにしろ、クラブの重心をポチェから別のところへ移す/分散させる必要はある。よって今後の方向性としてはSporting/Football Directorを招聘して再度長期のプランを組み直すことになるだろう。現在のところイタリア方面での報道が一つあったのみだが、結構現実味のある話だと思っている。

Report: Spurs looking at hiring Director of Football from European giants - Spurs Web - Tottenham Hotspur Football News

 

短期的な話をすれば、ツイッターでも解任の可能性だとかなんだかんだ言ってきたが、結局今季に限って言えばポチェで乗り切るのではないかと思い始めている。というのもポチェがようやく「今建て直しの最中である」と公言し、ロチェルソやセセニョンと言ったニューフェイスが徐々に試合に出るようになってきているからである。(個人的には遅いしタンガンガのような選手にもチャンスを与えてもらいたいところだが。)

ポチェはこの5年間でサポーターからもレヴィからも信頼を得ているので、彼が何か新しいことを始めると言うのであれば時間は与えられるはずなのだ。そして「Regeneration」が今季の方針であり、ローズエリクセントビーワニャマ辺りも放出しようとしていたことを考えると、さすがに今季の成績に関するハードルは低いはず。クラブの方針に沿ってスカッドのリフレッシュさえ進めれば、降格圏に沈みでもしない限り途中解任はないだろうと踏んでいる。解任=短期志向と思われがちだが、もしポチェがクラブを去るならば、それはポチェの考え方がクラブの長期的な方針に合わなくなってしまったということなのだと思う。

おわりに

意外とこういうシーズンはカップ戦で結果が出たりすることもあるし、今季はアップダウンの激しいジェットコースターのようなシーズンになることが予想される。サポーターとしてのモチベーションを維持することが難しいと思われる方も多いかもしれないが、ケイン然りヒーローというのはピンチの時にこそ現れるものである。このジェットコースターに振り落とされずしがみついていれば、シーズンの終わりまでに「新たな時代の幕開け」を目撃出来るかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

但しそうならなかったとしても責任は取りません。