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トッテナム ホットスパー (スパーズ)について語るブログ

スパーズの'19夏移籍市場をシミュレーションしてみよう

突然ですがあなたはスパーズのチーフスカウトに任命され、19年夏の移籍市場での獲得候補をリストアップするよう、レヴィ会長から指示を受けました。

誰をリストアップするかはもちろん自由ですが、クラブとして予算など様々な制約があります。あまりに的外れな選手をリストアップなんかすれば、最悪レヴィに首を切られます。

かといって妥協して、例えばフランスから適当な選手をリストアップしても、ポチェッティーノは妥協せず、「じゃあ補強ゼロでいいわ」と開き直ります。補強ゼロだと新しくやってきたチーフスカウトとしてのあなたの面目は丸つぶれであり、何とかしてレヴィとポチェッティーノ双方が納得するターゲットをリストアップし、スカウトとして目に見える結果をこのクラブに残したいと考えています。

 

もうスタジアム遅延のニュースでガッカリさせられることもないし、何か楽しいことをしたかった。このような設定で来夏の移籍市場のシミュレーションをしてもらったら面白いかなと思ったので、やってみたいと思います。今まで書いてきた経営戦略シリーズを基にして移籍市場での方針・制約をこちらで提示するので、それらを考慮した上で誰を獲得したいか、考えてみてください。

 

以下枠組みを提示していきますが、また色々情報を入れながら書いていて結構長いので結論だけ見たい方は最後まで飛ばしてください。

 

 

*放出候補

今まで書いてきた通り、スパーズの方針は「売却益を再投資」。よってまずは放出候補を考えていくら補強資金の元手が出来るのかを考える。

フォルム、ジョレンテ:契約切れ組→移籍金無し
トビー、エリクセン:残したいけど売却濃厚組→計£110m (25m+85m)
オーリエ、ワニャマ:期待に沿えなかった組→計£45m (25m+20m)
ヤンセン、エンクドゥ:ノーコメント組→計£15m (8m+7m)
CCV、オノマー、エドワーズ、ジョルジウ他:ローン?完全?残す?不透明な若手組→仮に全員売却となれば計£15m (5m+5m+3m+2m)
デンベレ:売却済み→£11mを冬から繰り越して夏に利用可能と仮定

イブスタの記事よろしく大量放出となるが、スタメン級はトビーエリクセン、ローテ組がオーリエくらい。ジョレンテはケイン不在時に活躍してくれたが、ほぼフォルムワニャマと同じで計算に入っていない。

売却価格はTransfermarktを参考にした。エリクセンは契約期間が短いので、報道されてたような天文学的な数字は現実的ではない。若手はちょっと安すぎると感じたので、HGプレミアムを上乗せしてみた(割と適当)。買い手はスタジアムが完成して手が空いたレヴィに頑張って探してくれるということで。

というわけでキリよく来夏の売却益は£200mということに。

*トリッピア―、ラメラを期待に沿えなかった組に入れるという案もあると思うが、この2人は残留と仮定。理由として、トリはそもそもHGなので出したくないし、昨シーズンの状態に戻れば少なくとも攻撃面での貢献度は大きい。オーリエを売るのはあまり成長の跡が見えない、何が得意なのか分からない、かつまだ若くCL経験豊富で売り手がつきそうだから。ラメラは周囲との相性次第、エリクセンを出すのでこれ以上2列目を出したくない、球離れさえよくなれば使える、といったところ。異論は認めるが今回はこれでお願いします。


*制約

次に補強するときに考えないといけないのが、予算とスカッド登録枠。昨夏は登録枠が無かったことも補強ゼロの大きな原因だった。

  • 予算

補強予算は前述の通り£200mとする。実際は売却益を全て充てられるとは限らないが、簡略化のため前述の放出の際の移籍金を全額補強に充てることが出来ると仮定。

またレヴィは売却益にプラスして補強予算があると言っていたが(前回コラムを参照)、とりあえず追加の補強予算は無しと仮定。

 

*実は昨夏の時点でフレンキーデヨングの獲得オファーをしていたことが本人の口から明かされた。昨年10月時点のTransfermarktでの市場価格は£36m。おそらくサンチェスと同等かそれ以上の金額をアヤックスは要求してくるため、少なくとも£40mのオファーはしてたんじゃないでしょうか。さすがに1人に80mとかは非現実だけど、40mくらいなら躊躇なく出せるということですね。

そして実際のところ追加の補強予算が無いわけではなさそう。まあ今回はシミュレーションなので売却益のみで補強ということで。

簡略化するが、詳細なレギュレーションは個々で確認を。

上述の放出を考慮に入れると、来季の構成は

  • PL:HGが7人、非HGが10人

→非HG選手を最多7人登録可能

→非HG選手を最多5人登録可能

(CLの方は色々ややこしいので、間違ってたら言ってください。)

 

CLの方がスパーズにとってはレギュレーションが厳しいため、こちらを基準に考える。

つまり、夏は(CLルールでの)「HG3人、非HG5人」の計8人を、約£200mの予算の範囲内で補強・登録可能

*補強箇所

つづいて補強箇所。大量の放出をシミュレートしたので、非常に補強箇所が多い。

以下は各ポジションについて、私見ではあるが参考まで。

GK:フォルムが契約切れのため、1枠空く。ロリスが不安定とはいえ、大金を賭してロリスからスタメンを奪うクラスの選手を取るべなのか?いざとなれば出場時には好パフォーマンスを披露しているガッザも控えている。若手のホワイトマン/オースティンがいるが、さすがに心もとない。0~1人獲得。

RB:オーリエが移籍したため、このままだとKWPが2番手となる。KWPはたまにしか出場せず試合勘が鈍っている割にはそこそこ良いパフォーマンスを披露している。だがトリッピアが20代後半なので、20代前半~半ばの選手を獲ってKWPと切磋琢磨させたい。1人獲得。

LB:スタメン2人が万全であれば、あえて大金を使ってスタメンを脅かす選手を取る必要性は相対的に低い。デイビスはソンを大外に回せば得意のサポートランが光る。最悪ヤンをLBに回せるし、獲得無しでも大丈夫。

CB:トビー移籍、ヤンの高齢化問題があるため、補強が必要。フォイスはフィジカルを鍛えてPLの笛に慣れさえすれば今後スタメンを張れる素材だと期待しているが、サンチェスは今のところ脳筋感が拭えない。ヤンはあと2年くらいトップレベルでやれるだろうし、ビルドアップの要となるポジションなので多少時間がかかってもスパーズの哲学にフィットする人材に大金をかけるべき。サンチェス、フォイスに出場機会を与えながら、もう一人若手に投資すべきか。とりあえず1人欲しい。

DMF:デンベレ、ワニャマが移籍。守備的MFがダイアーしかいないため、2ボランチを組みにくくなる。スキップの成長にかけたい気持ちもあるものの、ボール奪取力とビルドアップ能力を兼ね備えた人材が必要か。1人獲得。

CMF:シソコ、ウィンクスが今季3センターでスタメンを張る機会が多いこのエリア。インサイドハーフとして積極的にゴールに絡むことが出来る人材が不足している。1人獲得。

AMF/OMF:エリクセンが移籍するものの、アリとラメラで最低限の頭数は揃っている。最悪新しく獲得する攻撃的なCMFの選手を回すことも出来る。0~1人。

WG:フォーメーションにもよるがソンが控えSTを兼任する可能性も高く、もう1枚欲しいところ。さらに2トップを採用する機会も増えているため、2ndストライカーと兼任出来る選手なら尚良い。1人獲得。

ST/FW:WGの項と被るが、2ndストライカータイプは欲しい。ジョレンテのようなタワー系は終盤の数分しか活躍出来ないため非常にコスパが悪い。

絶対的存在ケインの控えとして、数分の出場で結果を求められるプレッシャーに耐えられる選手で無ければメンタルがもたない。ジョレンテほど経験豊富な猛者ですらギリだったので若手の獲得は悪手。理想はベンチを受け入れるベテラン。無理ならWGを回す。優先度が低いというか、ターゲットを見つけるのが非常に困難。0~1人獲得。

合計: GK、CB、RB、DMF、CMF、AMF、WG、STの最大8人を獲得

登録枠ピッタリ。£200mを8人で割ると£25m/人。例えばGK,AMF,STを諦め5人獲得とすると£40m/人。クラブ史上最高額のサンチェスとほぼ同額なので、この程度の金額は想定内。デヨング獲得オファーも恐らくこれくらいだった。

*スカウト基準

新加入選手全般に求める点として挙げられるのは

  • 各国代表に選ばれるレベルで、年齢は若い方がいい
  • 各国リーグでの優勝経験やCL出場経験があると尚よい
  • 練習も含めハードワークが出来る
  • 複数ポジションに対応可能
  • 現行スカッドにないクオリティを持っている(似たような選手は何人も要らない)かつ現行メンバーにフィットする
  • チャンスがなかなか回ってこなくても腐らない
  • 負けていても諦めない、チームの調子が悪くても、トロフィーが取れなくてもモチベーションを落とさない→安定した成績を残すために重要

参考にしたのは元スパーズのスカウトで(おそらく現在も)ダービーにいるマッキンゼーのインタビュー。トビーを獲得した際の決め手について語っている。

www.skysports.com

複数ポジ対応、アヤックスでの経験値、メンタリティ、ヤンとのパートナシップ等々スタッツ以外の定性的(qualitative)な要因で獲得を決めたとのこと。サンチェス、フォイス、ガッザと最終ラインに南米人を揃えているのも選手同士のパートナシップを考慮したのかも。

スタッツの秀でた選手は各クラブのスカウトの目に留まりやすく競合が増える。よって表面上のスタッツは特別良いわけではないけど、スパーズに完璧にフィットする人材と見つけることが出来れば、競合を避けることができレヴィの交渉術の効果を最大化することが出来る。そういえばトビーも取ってみればプレミア屈指のCBだったけど、競合はローン先のセインツだけで、ローン元のアトレティコも戻す気は全くなかった。

最後の2つの腐らないとか諦めないとかいうのも地味に重要。ベラヒーノみたいに移籍出来なかったからといって腐る選手はダメ。グリーリッシュみたいに直前で移籍が破断になっても残ったクラブで全力を尽くす、というのは良い傾向。

*その他

繰り返しだがスパーズはとにかくビッグクラブとの競合を避けたい。よって本気のターゲットは直前までメディアに洩れず、基本的にスパーズ側から情報が洩れることはない。(よって最近の内部情報は殆どあてにならない)昨シーズンはバルサが狙うと噂されたサンチェスを電光石火で確保。(またその際に「クライファートを2年後にください」とアヤックスと口約束していたが、アヤックスクライファート側に黙って進めていたため関係が破綻。結局ローマに移籍した。)デヨングにもいつの間にか正式オファーをしており、最終的に選手本人が「もうしばらくアヤックスでやりたい」と残留を決断した。なんやかんや陰で色々動いているのである。

 

またスパーズは明らかにメンデスやライオラのような強力すぎる代理人は避けている...というのがこれまでの傾向だったが今回ライオラを代理人に据えるデヨングへのオファーが発覚し、この限りでないことが判明した。1人くらいならOKなのか、ライオラは良いけどメンデスは駄目なのか、この辺りは分からない。

 

あと、余談だがレヴィはリヨンのオラス会長と仲が悪いと言われている。これはロリスを獲得したときの交渉過程でレヴィがハードネゴシエーター過ぎたためだと言われている。脈絡なくエンジを獲得したあと何故かマルセイユに売り飛ばすとかいう意味不明なムーブも繰り出してしまったので、オラスがレヴィと取引することは今後ないのではと言われているおり、エンドンベレ獲得交渉などは非常に厳しいと思われる。。。あと当然ながら直接のライバルクラブから選手を引き抜くのは限りなく不可能だと考えよう。

 *まとめ

  •  予算は£200m (獲得人数にもよるが1人£40m程度なら躊躇なく出せる)
  • 「HG3人、非HG5人」を登録可能
  • 補強箇所は GK、*CB、RB、*DMF、*CMF/AMF、*WG、ST (*付きは優先度高)
  • 若く練習熱心、出場機会がすぐに回ってこなくても腐らない、CL経験もしくはリーグ優勝経験がある、かつ、今のスカッドにいないタイプの選手が理想。
  • ビッグクラブとの競合は極力避ける。
  • ライオラやメンデスのような「ハイパーエージェント」は極力避ける。
  • ライバルクラブ等、仲の悪い相手との交渉はほぼ不可能。

補強選手の移籍金は報道やtransfermarktのようなサイトを参考にするのが定石ですね。選手は一点ものなので、第三者の評価通りにはなかなかなりませんが。特にHGの選手や競合の多い人気銘柄は高額になるのでご注意を。

 

お分かりの通り、色々な制約があって結構厳しいです笑 きっと昨夏もこんな感じで厳選した上でデヨングやグリーリッシュにアタックしたけど実現せず、ポチェの方針が「プランBは補強なし」だったので奇跡の補強ゼロが実現したと思われます。ただ今夏は放出が多くスカッド登録に問題が無い上に出場機会もある程度確保できそうなので、昨夏よりは動きやすくなります。

 

...ということで #スパーズ補強予想 のタグを使ってスパーズが今夏獲得する選手を予想してみてください。枠いっぱいの8人でもいいし、4人とか5人にしてスカッド登録する必要のない若手を使う、でもOKです。ただし今回書いた予算制約、補強箇所、獲得基準などの点は踏まえた上で。